帯ステッカー / スピッツ Spitz / オーロラになれなかった人のために / 30th Anniversary / Polydor UPJH-9026 / 小鐵徹 / 2017年再発

レーベル：Polydor
品番：UPJH-9026
フォーマット：12" LP（45 RPM, Mini-Album）
国：Japan
リリース年：2017年（オリジナル1992年）
タグ：Rock, Japan, Conceptual, Studio Work, Liminal, Arranged

このミニアルバムは、スピッツがまだ「ポップス」として定着する以前、音楽的拡張性と内向的世界観を同時に模索していた過渡期の作品です。編曲に長谷川智樹を迎えたことで、通常のロックバンド編成を越えた層状の構造が導入され、ライオン・メリィによる鍵盤の浮遊感、加藤JOE STRINGS GROUPによるストリングスの装飾性、山川恵子のハープによる儚さが、草野マサムネのボーカルの空白に優しく浸透していきます。特に「海ねこ」や「涙」では、空間的なEQ処理とリバーブの配置によって、音場が一種の内省的な風景として立ち上がる瞬間があります。これは「歌」を聴くというより、「歌が消えていく残響」に耳をすますという体験に近いかもしれません。

この作品は、当時のJ-Rock／メジャー流通におけるフォーマットやジャンル的期待から逸脱しながらも、「ミニアルバム」という形式を通じてバンドの側面性や可能性を照射する設計を持っています。1992年、ポリドールからのリリースという体制内の産物でありながら、むしろ制度の間隙を縫って編成された音の場であるとも言えるでしょう。

30周年記念盤として再発された本作は、小鐵徹によるリマスタリング／カッティングが施され、音響的な輪郭がより明瞭に、かつ身体に近く再構成されています。過去作の再発としての価値にとどまらず、「記録された感情のかけら」が新たな知覚として提示される、聴取の再制度化の試みでもあります。

このアルバムは、過去に置き去りにされた感情や未完成の思索に、再び「耳をすますための録音物」として、2020年代の聴取空間に静かに舞い戻ったのです。

メディア：VG+（微細なスレ、軽微なチリノイズ）
ジャケット：NM（美品）
付属品：インサート、円形ステッカー帯付きカバー付属

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