2001年 151ｐ

高知県立美術館では、「郷土作家」 の収集に基づいて、 過去に 「絵金」「日和崎尊夫」 「今西中通」 「山脇信徳」などの展覧会を行い、 作品を紹介してまいりました。 今回の「土方久功展」 は、こうした郷 土作家展の流れにそった展覧会です。
土方久功 (1900-1977) は、 東京に生まれましたが、父久路とその兄で久功の叔父に当たる久元は、 高知の出身です。 叔父久元は農商務大臣、宮内大臣を務めた明治維新の元勲であり、 久元の孫久 敬 (与志)は演出家として有名です。
久功は、 思春期から世界の古代民俗文化に興味を持ち、 彫刻を東京美術学校で学んだ後、独特 な作品を二科展、 院展に出品しましたが、いずれも落選してしまいます。 その結果、 日本彫刻界主流 の表現の偏狭性に失望し、 より独自の表現を高めるため、1929年、憧れていた当時日本の委任統治 領だったパラオ諸島へ渡りました。 久功は、島々を巡りながら昔話の収録、 民芸品の収集を行い、 南 洋で10年以上も生活習慣全般を調査しますが、後にこれらは、 『流木』 などの著作に纏められ、現在 民俗学的に貴重な資料となっています。 また、作品制作では、パラオ芸術のア・バイ絵の影響を受けた 木の浮彫を制作し、帰国後もパラオ諸島で描いたスケッチを基に、 木彫を彫り続けました。 東京に定 住した久功は、友人、親戚と交流を持ち、悠々自適な生活を送りました。 大学時代共に演劇を研究し た身内の土方与志をはじめ、俳優座劇場の俳優たちと交友し、劇場の裸婦デッサン会に参加したり しました。 そして、 作品発表を積極的に実施し、 個展をはじめ、日本アンデパンダン展、読売アンデパン ダン展、新樹会展、 新しき村展などに出品を続けました。 また、 「ぶたぶたくんのおかいもの」などの親 しみやすい絵本を手掛けています。 晩年は、 体力が衰えたため、主に身近な静物などを描きました。 この展覧会は、 パラオ諸島で暮らしながら美術の創作、民俗調査、詩作などに異彩を放った土方 久功の収蔵作品の中から、 彫刻、 木彫レリーフ、 油絵 水彩画、 素描などを中心に紹介するものです。 尚、本カタログは高知県立美術館・館蔵品目録5として刊行します。 すでに館蔵品目録は 1 マッ クス・クリンガー版画、 2 マルク・シャガール版画I 3 ドイツ表現主義の版画、 4 マルク・シャガール版画 IIを刊行しました。

表紙小傷。もちろん読む分には問題ありません。

なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。ご理解の上、ご購入下さい。