平成8年 398ｐ

序
本書は、国立歴史民俗博物館が1992~1994年度に日本古代印を対象として実施した出土印、伝世印、文 書等に押された印文に関する基礎的調査の成果をまとめたものである。
国立歴史民俗博物館では、これまで必ずしも十分に眼が向けられてこなかった歴史資料について、「非 文献資料の基礎的研究」 と題して基礎的調査を長期計画のもとに実施することとなり、「棟札関係史料集 成」に引き続き、 第2期として1992~1994年度に古印を対象として、 その所在状況および個々の内容など についての調査を行うことにした。
今回対象とする印章は、「大和古印」 などと称される日本古代の印章に限ることとする。ただし、この 報告書に収めたものの中には古代印と認めがたいものも存し、 今後の検討に俟つべきものが含まれている。 印の研究についてはこれまで専ら印章学の立場から扱われ、必ずしも古代の歴史資料として十分に位置づ けられたとは言いがたい。 それは古印について出土資料 伝世資料・印影資料がそれぞれ関連することな く個別に扱われてきたために、印の年代が定まらなかったことに起因すると考えられる。 そこで新たな古 印研究の指標としては次の点に留意する必要があろう。
印影資料は多くの場合年紀を伴うことから、 絶対年代が特定できる場合の少ない出土印や伝世印を調査 研究する上で重要な比較資料となる。 逆に出土印や伝世印からは、 印影資料にない印の形状や彫り方さら に材質等の情報を得られる。
このような古印に関する総合的研究を推し進めるならば、 今後古印は新たな古文書学の一分野として重 要な位置を占めることも可能になるであろう。 また、こうした基礎資料集成を通じて三者を比較検討し、 我が国における古代印の編年を確立し、さらに古代印のもつ歴史資料としての意義を多面的に究明するこ とを目指したい。
本調査が全国各地の関係機関 諸氏にご協力をいただき集成したものであるので、その基礎データをい ち速く報告書刊行という形で公表することとした。 本調査において集成した写真資料、 および本調査を通 じて得ることのできた数多くの研究成果については、別途、図録・論考篇として刊行する予定である。 本 報告書に収めたデータ図面等の補訂事項についても上記の図録・論考篇に掲載したい。
本調査および本報告書作成にあたり、全面的にご協力いただいた諸機関・諸氏各位に対し、心から御礼 申しあげたい。
平成8年3月
国立歴史民俗博物館

表紙小傷、小汚れ、薄い折れ線。もちろん読む分には問題ありません。

なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。ご理解の上、ご購入下さい。