図表で見る江戸東京の世界 平成16年 159ページ
大江戸八百八町 平成15年231ページ

ごあいさつ
創立10周年に際して江戸東京博物館の特別展示会「大江戸八百八町展」が開催され、ベルリン東洋美術館の所 蔵品から出展された一点に大役が与えられましたことは、我々の大きな喜びと名誉であります。 長さ12メートル を超える精緻に描かれた絵巻 「熈代勝覧」は、極めてユーモアに溢れ、日本橋界隈で最も栄えた或る商店街の魅 力的な賑わいを表しています。 この絵巻物は、単に美術史に残る傑作であるだけでなく、 19世紀初めに繁栄した 都、江戸の活き活きとした多様な市民生活を実によく伝えています。 文化史として観ても、重要な意味のある作 品と云えます。
このたび江八町」展
およそ10年前、当美術館の賛助会員であるハンス=ヨアヒム・キュスター氏は、転居の際に偶然にも屋根裏で この絵巻 「熈代勝覧」を発見したのです。 美術館でそれを見た我々は、描写されたディテールの豊かさに驚嘆し たのです。しかし、未だ誰もこの作品の芸術的・歴史的価値を評価することができませんでした。キュスター氏 には子孫が居ません。 彼のコレクションは主として中国美術であり、 絵巻 「熈代勝覧」 が唯一日本の収集品でし た。 彼の死後、 それらは美術館に寄託され、 巻物は長い間、人知れず保管倉庫に眠っていたのです。
2000年10月、 東洋美術館が再び開かれることになり、 その準備中に我々はこの絵巻を見付け出し、学術的に調 べさせることを決めました。 幸いなことに、 ケルン大学のDr. フランチスカ・エームケ教授がこの興味深い作品を ゼミナールの研究対象とすることを申し出られ、 学生達と一緒に極めて多くのディテールを “解明” することに なりました。この絵巻物 「熈代勝覧」 をご覧になった学習院大学の小林忠教授もまた、その高い芸術性に感銘を 受けられました。 私共は、この巻物が貴重な芸術作品であることを確信しております。
この度、この魅力的な 「熈代勝覧」 の世界が日本の皆様にもご鑑賞いただけますことを非常に嬉しく思います。 ベルリンにて、 2002年12月

表紙小傷。ページ小黄ばみ。

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