【目次】
第1　丈部氏および丈部の研究
第2　猪養と猪使氏
第3　武蔵の古代豪族と稲荷山鉄剣銘
第4　蘇我氏と古代大王国家
第5　但馬の日下部氏の系譜伝承
第6　山上氏の出自と性格
第7　山上憶良と粟田氏の同族
第8　雑戸の姓氏と造籍
第9　承和の遣唐使をめぐる賜氏と移貫
第10　承和の遣唐使の人名の研究

はしがき
さきに刊行された拙著『新撰姓氏録の研究』索引・論考篇に収めることになっていた三編の論文が、同書の頁 数の関係から割愛せざるをえなくなったため、新たに七編の論考を加えて、ここに本書は成ったのである。十編 の論文は、いずれも古代氏族・人名にかかわり、『新撰姓氏録の研究』考証篇の執筆の中で、ものされたもので ある。論文のすべては、既発表のものであるが、あまり目に触れることのない雑誌などに発表したものもあるの で、一書としてまとめるのは、けっして無意味でないと思う。そして本書が『新撰姓氏録の研究』考証篇の補遺 役割を担っていることは、理解していただけるであろう。
岸俊男氏は、かつて古代政治過程の研究にあたって、坂本太郎氏の研究成果を意識しながら、諸氏族の個別研 究の必要性を強調されたことがある(「古代史研究法」、和歌森太郎編『新日本史大系』 別巻、昭和三十二年十月)。 この 提唱以前に、すでに井上光貞・関晃の両氏が、すぐれた個別氏族の研究を発表されていたが、その後、岸氏自身 をはじめ、直木孝次郎・平野邦雄の両氏、ならびに多くの古代史研究者が、個別氏族についての貴重な研究成果 を公表しておられる。私も『新撰姓氏録』の研究にあわせて、古代氏族の研究を、つねづね心がけてきたのである

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