2010年　241P

ご挨拶
平成二十二年十一月
五島美術館は、昭和三十五年(一九六〇)に開館しました。創立者である東京急行電鉄の元会長・ 五島慶太翁(一八八二―一九五九)が、喜寿を迎えるにあたり美術品と土地の一部を寄贈されたのが、 その始まりです。開館に際しては、東京急行電鉄の後援により美術品を追加購入し、現在の骨格 ができあがりました。その中に、国宝「源氏物語絵巻」も含まれています。
五島昇・元会長(一九一六一九八九)も先代に引き続き援助を惜しまず、広大な緑あふれる庭園を 提供し、さらに平成元年(一九八九)、遺志により多数の日本画を寄贈されました。五島家二代の寄 贈により、現在のような美術館の環境と収蔵品が充実し、永年にわたる多くの皆様からのご支援 により満五十年を迎えることができた次第です。
この記念すべき年にあたり、徳川美術館のご協力を得て、国宝「源氏物語絵巻」を一堂に集める 展覧会を開催いたします。東京ですべてを公開するのは、十年ぶりのことです。本図録は、国宝 「源氏物語絵巻」の全容を紹介するために編纂いたしました。周知の通り、この絵巻は世界最古の 長編小説を絵画化したもので、しかも現存する物語絵巻の中で最も古く、王朝貴族の世界を鑑賞 者の眼前に具現化してくれる貴重な作品でもあります。
この絵巻の特質を明らかにするために、関連する貴重な資料を合わせて掲載いたしました。 本 書によって王朝絵巻の真髄をお楽しみ頂ければ幸いです。
最後に、貴重な作品をご出品下さった徳川美術館をはじめ、多大なご協力を賜りました美術 館・博物館、ご所蔵家の皆様、そして最新の研究成果を反映した玉稿を賜りました四辻秀紀氏、 稲本万里子氏に深甚なる謝意を表する次第です。
財団法人 五島美術館