昭和47年　厚さ2㎝程度

歌川広重
うたがわひろしげ
[生]寛政9(1797).江戸
[没]安政5(1858).9.6. 江戸
江戸時代末期の浮世絵師。幼名は徳太郎のち重右衛門。文化6 (1809) 年両親を失い，家職の八代洲河岸 (やよすがし) 火消し同心を継いだが，画家を志し同8年歌川豊広に師事，翌年歌川広重と称した。家姓の安藤広重の名も通用している。別号は一遊斎，一幽斎，天保3 (32) 年から一立斎，同 13年頃から立斎。豊広のほか，狩野派を岡島林斎に，南画を大岡雲峰に習い，四条派，西洋画法も学ぶ。最初は美人画，役者絵，草双紙挿絵などを描く。天保3年，幕府八朔御馬 (はっさくおうま) 献上の一行に加わり東海道を旅行。このとき写生した道中の風景，風俗を基に翌年から保永堂版『東海道五拾三次』 55枚を発表，出世作となる。その後 37種類の東海道シリーズを描くが，保永堂版を凌駕する作品はない。さらに『京都名所』 (34) ，『浪花名所図会』 (34) ，『江戸近郊八景』 (37) ，『木曾海道六拾九次』 (37) ，『名所江戸百景』 (56～58) などを出版，風景画家として名声を博す。花鳥画，肉筆画にも才能を示し，門人も多く，没後も広重の名は襲名され，3代まで続いた。
出典　ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

広重と東海道五十三次

浮世絵は,がんらい世態風俗を描くことを目的として発生し、またそのために江戸時代の庶民の人気をあつめ したものであるが, 寛政年代 (1790) にいたってようやく飽和状態となった。 この行きづまりの浮世絵に新風をふ きみ, 新しい方向にむかわせたのは葛飾北斎であったが,この新しい分野とは人間以外の自然, すなわち風景 画であった。 もっとも浮世絵の風景画は、純粋な自然描写ではない。 いわゆる山水画とは異なり, 庶民生活, つ まり人間をもふくめた自然描写である。 浮世絵師の視点が, 人体そのものから、やがて人体をふくめた全体にむ けられたといってよいかもしれない。 北斎のこの新しい視野は浮世絵の画題の範囲をひろげさせ, ひいては花鳥 画をも重要な画題のひとつに加えるにいたったのであるが, 風景画をより一般化した点において, 北斎のあとを 追って登場した歌川広重をあげなければなるまい。
広重といえば, 私たちはすぐ東海道五十三次を思いだす。 それほどこの画集は有名であるとともに, 広重の史 上価値を決定づけたものであった。
広重がこの世に生をうけたのは寛政9年(1797) である。 このころから北斎は新しい風景画に手をつけはじめ たのであるから, 北斎よりはるかに後輩だったといえる。 江戸八代洲河岸の定火消同心であった安藤源右衛門の 子で,幼名を徳太郎, のちに重右衛門, 徳兵衛などともいった。 13歳のときに両親をうしなったので, 少年で 定火消同心の役目をつがなければならなかった。 がんらい絵の好きなかれに, まっとうに同心職がつとまるはず もなく, 15年ほどつとめたが, 文政6年(1823) 11月, 俗に子とつたえられる仲次郎に職をゆずった。

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