平成29年43ページ

ごあいさつ

このたび、 城西大学水田美術館におきまして 「江戸子ども学びの風景展」を開催する運び 「学問による人間形成」 となりました。
一本学創立者水田三喜男が掲げた建学の精神は、 学ぶことを通して 道徳的人格を育むことが根底にあります。 そしてその精神は、かつて江戸時代に多くの庶民 の子どもたちが通い、 学んだ寺子屋の教育理念と通じています。 14世紀頃から始まったとさ れる寺子屋は、江戸時代に入ると都市から農村まで全国的に広がって展開されるほどで、 般庶民の識字率が非常に低かったヨーロッパに比べ、 就学率、 識字率ともに世界でも最高レベルにありました。 その背景には、 寺子屋が民間人による庶民のための私的な教育システム によって成立したことがあげられ、 義務的なものではなかったため、 学費、 就学年齢、 男女 や家柄の区別はなく、 どんな子どもでも学びたい時に学びたい期間だけ自由に読み・書き・そろばんを学ぶことができるというのが特徴でした。
このたびの展覧会では、そうした寺子屋での子どもたちの学びに焦点を当て、どんな教育 環境でどのように学んでいたのかを、 その様子が窺える浮世絵版画を中心に、 教材として使 も展示しながらご紹介していきます。 中でも往来物については、幕末から明治にかけ、県内 われていた往来物をはじめ、 天神机、 そろばんといった実際に寺子屋で使われていた道具類 において日本最大級の規模を誇った入間郡北野村 (現・所沢市) の寺子屋 「北広堂」 の手習い師匠澤田泉山 (1823~1910) による私家版の往来物11点を展示し、 寺子屋教育の地方展開
の一例としてもご覧いただきます。
教育の原点ともいえる寺子屋教育について、 江戸の子どもたちを取り巻く学びの環境を振り返りながら、現代教育の在り方について再び考える機会となれれば幸いです。
最後になりますが、本展を開催するにあたり、公文教育研究会をはじめ、早稲田大学図書 館、個人所蔵の皆様、諸機関より貴重な所蔵作品の調査とご出品にご協力を賜りましたこと、 ここに深く感謝いたします。また、澤田泉山往来物について、 往来物等ご所蔵資料ご出品と ともに貴重なご助言を下さいました小泉吉永氏、 《北野往来》 のご出品にご快諾下さいました 澤田知幸氏(澤田家21代目当主)、そして澤田家調査時よりご尽力をいただきました所沢市教 育委員会文化財保護課に対し、 衷心より御礼申し上げます。
平成29年10月
城西大学水田美術館

表紙小傷、小汚れ。もちろん読む分には問題ありません。

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