「近世土佐の群像」などというサブタイトルは、少し大きすぎるかもしれない。それでも出版社 から文句を言われないのは、私費出版の最大のメリットである。これらの群像は歴史に名を残し た人々を指すのではなく、土佐の歴史の中ではマイナーな人々のことである。中でも、激動の時 代を一つの志をもって生き、報われずに世を去った人々である。私自身の専門からすれば、政治 家よりも技術者の方に興味がシフトしやすい。

これらの人々が、それぞれマイナーだった理由はあるだろう。そして、歴史に名が残らなかっ た理由もあるであろう。一方、我が国の今日の繁栄が、いったい誰のおかげなのだと考えるとき、 それは歴史に名を残した人々だけによるものでないことは自明である。

普通の本には取り上げられない、こうした人々の事績を後世に残す仕事のことは、私が大学の 職を離れる前から意識の中にあった。歴史に関して浅学の私にとっては、かなり荷の重いことだ が、しばらくは退職後の自由な時間を使って勉強し、及ばずながらこの分野に貢献したいと願っ ている。ささやかな退職金の一部を、これらのシリーズの出版費用に充てることは、私自身がこ れまで生きてきたことの証であり、先人に対する恩返しのようなものである。出版社から出せば、 それだけ多くの人に読まれることはわかっているのだが、図書館等に少部数でも存在すれば、百 年もたてば似たようなものである。それよりも、出版社が黒字になるほどは売れそうもない内容 であることを、私自身が最も良く知っている。

表紙小傷程度で特に目立った傷や汚れはありません。おそらく未読品です。