1987年　厚さ約9mm

天文十年(一五四三)、種子島に漂着したポルトガル人が日本に鉄砲を伝え、 続V天文十八年、イエズス会宣教師フランシスコ・ザビエルによってキリスト 教が伝えられた。このことが日本人にとっては初めての西洋体験となった。こ の時来日したポルトガル人やスペイン人を総称して、我が国では見知らぬ異国 文化への憧れを込めて南蛮人と呼び、彼らがもたらした西洋文化に刺激されて 形成された異国情緒豊かな美術を南蛮美術と呼んでいる。

このカトリック系の 国を南蛮と呼んだのに対し、彼らに遅れて来日したオランダ・イギリスなどの プロテスタント系の国々を紅毛と呼んで区別している。

この南蛮人が来航した時代は、ヨーロッパが世界に向けて大航海に乗り出し、世界文明を形成しようとした時にあたった。彼らと日本人との交流は、桃山時 代から江戸時代初めの寛永十六年(一六三九)鎖国令が出るまでの約一世紀にわ だって行われた。その間、日本からは東インド会社を通じて櫃をはじめとする おびただしい漆器類が輸出され、また西洋からはキリスト教伝導の手段として 聖画や銅版画が持ち込まれた。

そこに展開される遠近法による三次元空間は、 日本人の目を驚かせ、遠い異国の文化への憧れを助長したであろう。この西洋 画法は、布教の必要上から早速日本人にも伝授され、部分的に未消化なところ を残しながらも西洋風の画風をこなす日本人画工が誕生した。また、従来見た こともない世界地図によって、唐・天竺という狭い世界しか知らなかった日本人に、ヨーロッパという広大な世界観が与えられたのであった。

本展では、こうした桃山時代における初めての西洋体験と、異文化の接触に よって活性化された造形の世界の一面を提示し、皆様を異国へのタイム・スリ ップへとご案内いたしたい。

中古品ですので傷・黄ばみ・破れ・折れ等経年の汚れはあります。表紙小傷、小汚れ。ページ小黄ばみ。
もちろん読む分には問題ありません。42971新

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