1980年118ページ 　カバー欠

まえがき
生活のなかに木工材料としての木が無かったらと考えるとき,あまりにも容易に木 が使われすぎていることに驚きます.とくに住生活のなかに、木はじつに巧みに、 しかもきわめて多く使われています。
木工の始まりは弥生文化の時代にあり、飛鳥時代に一応のまとまりをみせ、江戸時 代になると、住居の水準の向上にともなって、指物木工の分野が成立し, 江戸指物 をはじめ地方木工がいちじるしく発展しました。
これらの時代を経て, ベニヤ板, ロール合板, パーチクルボード, 積層材の使用や 金属類,ガラス類,合成樹脂類の応用を含む機械万能の現代の木工があるわけです が,機械化は、ものづくりの手段であるとはいえ、その本質は省力にほかなりませ 省力とは,産業革命の時点で実現できなかった,人と機械との間の合理性の追 求にあると考えることができると思います.
木工が、なぜここまで進歩発達し, 伝統的な技術が継承されてきたかを考えると き機械万能の現代において,今日,再び機械加工に代わって手加工の価値が再評 価され,手でつくることが, 木工の分野はもとより, いろいろな方面で広まってい る理由の一つがわかるような気がします. そして, この手加工につながる木工の伝 統技術の中心となっているものの一つが,つぎ手と仕口の技術であるということが できましょう.
木工のつぎ手や仕口は,従来, 同じ手口のものごとに分類されていますが、本書は, 手口を使う目的, 個所, 工作の形を分類の基準とし,これに従って, 木工の実務に 役立つように,つぎ手や仕口を具体的に図解したものです. 温故知新という言葉が あるように, つぎ手, 仕口に見られる先人の知慧を学ぶことによって、本来の木工 の精神を再発見していただければ幸いです.
終わりに,本書執筆にあたり,参考にさせて頂いた著書・文献の著者 執筆者各位、 ならびに終始いろいろとご指導を賜わりました恩師築島棟吉先生に、深く御礼申し あげます
1980年 9月
著者

表紙傷、表紙上部にややシミ。ページ小黄ばみ。カバー欠。もちろん読む分には問題ありません。

なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。ご理解の上、ご購入下さい。