昭和50年　255ページ
現代における茶道の普及は、前代にみられない興隆をむかえ、これに伴なって茶道をより深く研究したいとい う要求が、広く茶道人のなかに生れていることは、見逃せない事実であります。この要求は宗教的な実践の場で ある茶において、道」としての確立がはかられるものであります。 またその一方、日本文化のなかに占める茶 道の重要性も、あらためて認識せられ、茶道界内外に学問的な茶道研究が強くもとめられ、それによって初め て、茶道学』が不動のものとなるのであります。茶道におけるとの一道」と学》とは、点前作法という。実。 を基盤にして成りたつもので、こうした~道・学・実』の三位を一体化することが私の理念であり又今後の茶道 界に課せられた大きな問題点であると思うのであります。

こうした時代の期待にこたえるため、今日庵文庫では、茶道に関する文献を古今東西にわたって蒐集し、総合 的な茶道資料館としての発展を目的としながら、茶に関する資料センターとしての機能をはたすべく、その運営 につとめ、現在では、我が国屈指の茶道資料館となっているのであります。

今回、裏千家茶道の指針である道・学・実の三位一体をはかる最初の試みとして、「茶道文化研究」を創刊することにしました。その目的は純粋に学術的なすぐれた研究と、充分な史料批判にたった資料を中心として、 豊かな茶道研究の成果を学界ならびに茶道界におくり、新たな茶道研究の地平を拓りひらくことであります。と うした新しい研究が求められるためには、在来の視点にとらわれず、広い国際的な視野と、茶道が含むさまざま
のジャンルにわたる総合的な研究態度が必要とされ、それが常に厳密な実証的態度に貫かれていなければなりま せん。したがって「茶道文化研究」の扱う範囲は、史的研究は勿論、宗教的・芸術的・哲学的・道徳的・修道的 ・社交的な、茶道の影響する周辺の広大な文化領域まで含むととになります。同時に今日庵文庫に収蔵されてい る文献を中心に、内外の広汎な茶道文献翻刻・資料研究を行ない、広く一般の利用に供し、さらに「茶道文化研 究」の刊行を通じて新たな茶道研究者を育成し、茶道学の大成をめざすことを目的とするものであります。

第2集
特集 杉木普斎
宗旦四天王と三千家熊倉功夫
神部と茶人―杉木普斎とその周辺―岩田貞雄
杉木普斎とその伝書谷端昭夫
茶室史における普斎伝書中村昌生


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