錬金術 : 秘密の「知」の実験室
Guy Ogilvy / 藤岡 啓介
定価: ￥ 1320

#GuyOgilvy #藤岡啓介 #本 #世界史

錬金術の物語は、ヨーロッパでは、黄金とそれにまつわる人間の物語
古代から中世にかけての錬金術は、ありふれた金属を黄金に変える術をはるかに超え、あらゆる物質の変容を研究する万能の学であった。錬金術師は、化学、金属学、薬学から、香料の精製や絵の具の調合まで、あらゆるジャンルの知と実学を探求した。例えば「東洋の神秘」であった磁器の製法を解明したのも、18世紀のドイツ人錬金術師であった。本書で著者は古代、中世、近代の錬金術師の秘密の処方箋を明らかにし、万能の学の復活を提唱する。


錬金術の専門用語では、「魂」と「精気」を「硫黄」と「水銀」という名称で置き換えている。ふつうにある硫黄や水銀とはまったく異なるもので、これらは、まさに創成の暁に発生する存在の第一原質である。この二者は対になっていて、両極にあるがそれぞれ相補い調和していると考えられる。
……。
硫黄は、「魂」とみられていて、「魂」のもついくつかの「精気」の個別の意識である。熱い、乾いた、燃え立つ、といった男性的な原質であって、能動的で種を発生し、「太陽神」「石の父」といわれる。………。
水銀は「精気」とみられていて、生命の力、万物の「普遍的な魂」である。水銀は受動的で、女性的であり、冷たく湿っていて、永遠の女性「プリマ・マテリア」である。
すなわち、第一物質であり、母体であり、万物の母である。………。
〈硫黄と水銀　対立物の調和　より〉

「魂」と「精気」の両者が有限である状態(肉体)から解き放たれると、両者の「原質」は純化され、調和され、こうして初めて両者の聖なる結合が行われる。これが、「赤い王」と「白い王妃」との化学的な結婚である。この結合による子が超越的な両性具有の子、「精気」が吹き込まれた子である。この不死で、精神的に昇華された「魂」の図が、18世紀の作者不明の大著『月と太陽の半陰陽の子』に描かれている(右頁)。
〈化学の結婚 太陽と月の結婚　より〉


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