●江戸明治和本●鑑草（延宝3年・改装2冊本＊6巻揃） 稀書往来物

【判型】大本6巻2冊。縦259粍。

【作者】中江藤樹作。

【年代等】延宝3年再刊。［京都］福森平左衛門ほか板。

【備考】分類「教訓・往来物」。『鑑草』は、説話の大半を明の顔茂猷編『迪吉録』に取材し、また、李氏朝鮮世宗14年（1432）刊『三綱行実図』や『劉向列女伝』等からの説話を引きながら、因果応報の道理を平易に諭した仮名書きの女訓書。幸福の源泉を「明徳・仏性」に求め、この「明徳・仏性」の修業の鑑として、巻1「孝逆之報」、巻2「守節背夫報」、巻3「不嫉妬毒報」、巻4「教子報」、巻5「慈残報・仁虐報」、巻6「淑睦報・廉貪報」の八報について述べる。孝行と不孝の因果論や舅姑への孝、夫への貞節、嫉妬の戒め、明徳・仏性教育、継子への愛、下僕への憐愍、姑・小姑との和睦などについて儒仏両面から平易に説く。／『鑑草』は、6巻、教訓、中江藤樹著。藤樹36、7歳頃の著作で、正保4年、風月宗知刊。内容は、女子の教訓書で、中国明末の顔茂猷編『迪吉録』「女鑑門」中の説話からの抜書きを主とし、李氏朝鮮世宗14年の『三綱行実図』などからも取材している。『迪吉録』の因果応報思想を受け取っており、序文に「福ひの種は明徳仏性なり」とあって、陽明学の明徳（良知）思想と仏教思想を一体としている。孝行な人には福があり、不孝な人には天罰がくだる（孝逆の報）という因果論に始まり、女は夫の父母をわが父母とすべきことを説く。夫が死んでも二夫にまみえないこと（守節背夫報）、悋気を抑えるべきこと（不嫉妬毒報）、子に明徳仏性を教えるべきこと（教子報）、継子を我が子と同じく愛すべきこと（慈残報）、使用人に慈悲深くあるべきこと（仁虐報）、姑・小姑によく親しむべきこと（淑睦報）など、例話をあげてそれに評を付する。心の本体は万物一体の仁であるとする儒教思想や、無明（邪見妄執）が生死輪廻の種であるとする仏教思想を説くが、かなり通俗的である。藤樹は晩年になり仏教を次第に認容するに至ったが、母が仏教信者であったこととも関連する（「日本古典文学大辞典」参照）。

★改装・題簽欠・状態並み(小虫補修、1-2カ所伴読困難箇所有り)。稀書(全国に所蔵数カ所(国文学研究資料館DB))。