やや緑がかった小玉が2つ、薄い赤茶系統の小玉が3つ、それに灰色の小玉2つの、ガラスの先駆、ファイアンスです。とくに灰色の小玉2つには、小さな窪んだ孔（気泡跡）が多く見られます。紀元前後～200年頃のローマン・ファイアンスより、遅い600年～1000年頃の、イランで制作されたファイアンスと想定されます、

　右端の玉には胎中央に数カ所にやや透明な丸い粒が数個含まれ、胎には縦に微かに切り込みが見られ、ファイアンス・ビーズやその後のガラス・ビーズに古くから登場する蜜柑玉の微かな形が見られます。また、中央の3つには、1～2カ所に未融解の丸い粒が見られます(３枚め)。

　ファイアンスは、真のガラスの先駆と一般的に考えられ、前4000年までにメソポタミアかエジプトで発明されました。前2000年頃の、エジプト初期ファイアンスは、酸化銅により青く着色されました。トルコ石やラピスなど貴石を高価でない素材で再現し、大量生産するために発明された、最初の合成素材とされます。

　主要な素材としてシリカ（ケイ素）、砂状や粉状の水晶に、少量の植物灰など加え、これに石灰を加えます。ソーダと石灰は、シリカを完全に融解させるほど十分な量でなく、少量のガラス成分を作るに限られ、そして着色剤として酸化銅などが加えられて成形されました。

　ファイアンスは、冷たい作業のビーズとされます。ガラスのように、ガラスを融解させて成形する熱い作業の技術で作られたビーズと異なり、胎の表面にガラス状の物質を作るために、「冷たい釉薬」ペーストを準備し、3つの方法で作られます。釉薬を胎に塗って加熱、あるいは、ペーストを型に入れ、取り出して乾燥させて加熱。また、ペーストで胎を成形し、乾燥後に釉薬の混合粉と一緒に密封容器に入れ加熱します。

　本品イラン（ペルシャ）のファイアンスは3つめの手法で制作され、青、緑、ブラウン、黄、白い色を示します。また、釉薬もエジプトのつやつやした青と異なり、色は薄く、鮮やかでなく つや消しされているとされます。本品は、つや消しされ、色は薄い青、ブラウン、白などの、イランのファイアンスの特徴を示します。エジプトのファイアンスとの違いを知るために、興味深く不可欠なファイアンスです。

サイズ　青大　高さ　約7㍉　幅　約11㍉　孔径　約4㍉