樂吉左衛門
一九九九年秋-ニ〇〇五年春 創作

このたび当館では、特別展「楽吉左衛門一九九九年秋二〇〇五年春創作」を開催いたします。

桃山時代に、初代長次郎が茶の湯の大成者、千利休の創意を受けて楽茶碗を創始して以来,四百年余 にわたり楽家は「楽焼 脚ちゃわん屋」の暖暖をかかげ、手裡れによる成形方法や内窯を用いた独特の使 成技術,一碗ずつ丹念に制作する技法を江戸時代の初期から一子相伝で伝え、樂茶碗を現代に継承させ てきました。

当代吉左衛門は、一九四九年に生まれ三十二歳で十五代を襲名しました。彫刻的な造形と抽象絵画 を思わせる釉薬の妙なる表現を特徴とする当代の作品は、樂茶碗の新たな創造として高く評価され、日 本の伝統文化の所産である茶の湯の茶碗のあり方を現代に問いかけ、個性的な造形性を二十五年にわ たって探求してきました。

四百年という歴史の重みを受け容れつつ現代に生きるという人生は、私たちの容易に想像できるこ とではありません。けれども、徹底して追求された造形と加飾がみせる茶碗の無限の可能性に当代の 真摯な姿を見とめたとき、その精神の深淵さ、重厚さに感動を覚えるのではないでしょうか。

本展は、一九九〇年の「天問」以来十五年ぶりの個展となります。一九九九年秋から二〇〇五年春に かけて制作された焼貫黒楽茶碗三十六点を展観いたします。

菊池寛実記念 智美術館





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