本品は、青の6層シェブロンと赤の6層シェブロンです。青のシェブロンは、不透明な乳白色の軸にギザギザの、青、白、赤茶、白、青の6層に成形されています。青は、コバルト青で着色されて、以前からシェブロンに特徴的な美しい青、藍色となっています。
　シェブロンは、6層でも4層でも、次のように制作されます。一番内側の白いガラス種に、2層となる、不透明な青ガラスを被せ、その後、ギザギザのある金型に挿入し鋸歯の紋様を作り、3層の白いガラスでも繰り返します。4層で再度、青ガラスを被せて棒状のカンネを作り、以下赤茶、白、そして最後の青の層でも繰り返します。
　最後に、軸より上の層で胎を斜めに切り、切り口にギザギザ模様が表示されるように成形し、最後の不透明白の部分では垂直に切断しています。
シェブロンは、ベネチアが16Cから角ばった、芯がクリアな軸青の7層シェブロンを制作し始め、16C末にはオランダも丸みがかったシェブロンを制作しました。16-17C以降も、ベネチアでは各種のシェブロンが制作され、交易ビーズとして多数がアフリカに流入しました。
　本品のような、クリアな白い芯の青シェブロンで小型は、19C後半から20C初頭ころに制作されたと想定されています。
また、赤い小型シェブロンは、黒い芯にギザギザの、赤、黒、白、赤の5層に成形されています。ただ、本品、青のシェブロンでは、白の芯にギザギザの青が被されていますけれども、赤のシェブロンでは、黒の芯のすぐ上の赤は丸型で、黒に接する側がギザギザに成形されています。赤のシェブロンも、ベネチア製で20C初頭頃に制作されたとされています。
研究書Chevron and Nueva Cadis Beadsには、赤シェブロン（高さ　約32㍉）の連が掲載され（79ページ）、1922年のSick社のサンプルに形成された赤いシェブロンと記し、また、黒く見える胎は、深いコバルト青ガラスと説明しています。なお、掲載の赤シェブロンでは、黒の胎に接する赤の層も、ギザギザに成形されています。赤いシェブロンには5層が多く見られますが、本品では赤の層が簡素化されています。
本品は、コバルト青と赤、2色のシェブロン小玉です。
　サイズ　青　高さ　約10㍉強　幅　約7㍉強　孔径　　約1㍉　赤　高さ　約10㍉　幅　約7㍉強　孔径　約2㍉