ハイドン

・変奏曲へ短調 Hob.XVII-6

・ソナタ ト長調（第5番） Hob.XVI/11

・ソナタ第23番ヘ長調（第38番） Hob.XVI-23

・ソナタ第50番ハ長調（第60番） Hob.XVI-50

・ソナタ第20番ハ短調（第33番） Hob.XVI-20



エフゲニー・コロリオフ（ピアノ）

録音：2004年



ギレリスと同門で、ネイガウス、ユージナ、オボーリンらに師事したコロリオフは、ロシア・ピアニズムの流れを汲む世界的ピアニスト。得意のバッハ同様に、ここでのハイドンもまた「ピアノの哲学者」といった趣で、折り目正しさのなかに温もりが感じられます。スタジオでセッションを組んでおこなわれたもので、音質もすぐれています。



この演奏の時は55歳ということで、ピアニストとしては円熟期でしょう。力みは一切なく、ピアノの鍵盤を七分の力でゆったりと弾くような演奏。しかも響きの変化を聴かせようとか、曲の構造を明確にしようなどといった意図もまったくないように、ただただ、淡々と楽譜を音にしていくような感じ。ちょっと聴いただけでも悟りきったような永久の諦観を感じるような演奏です。ハイドンがまるでバッハのように響きます。



1曲目は名曲アンダンテと変奏曲。ゆったりと誰もいない砂浜を散歩するような入り。徐々にダイナミックレンジが大きくなりますが、それでも7～8分に抑えて弾いていきます。音質はスタインウェイらしいキラメキ感のある非常に解像度の高い良い録音。少しヴォリュームを上げると部屋の中に最新のスタインウェイのコンサートグランドが出現するようなリアリティの高い音で、残響も適度で美しいもの。中盤をこえても散歩の足取りは一貫していて、ゆったりと、しかし確実な歩み。最後はようやく歩みを緩めて静寂に消え入ります。これはなかなか通好みの演奏。派手さは全くないんですが、燻し銀というか、ピアノを聴く楽しみの神髄をえぐるというか、そういった種類の演奏。ピアノを聴く楽しみをよく知った人にこそ聴いてほしい佳演です。



「クリアで硬質な打鍵」で「澄んだ湖のような透明感と、不思議な静けさ」を感じます。クリアなのに枯れているところが、常人には真似の出来ないところです。



輸入盤【新品未開封】24



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