柴田さんと高橋さんの「小説の読み方、書き方、訳し方」
柴田 元幸 / 高橋 源一郎
定価: ￥ 1540

#柴田元幸 #高橋源一郎 #本 #文学

小説は、“読む”だけではもったいない。書いて、訳して、また読んでみたら、あなたも小説を100倍楽しめます……日本を代表する作家と翻訳者が贈る、初の“三位一体”小説入門！


………。
【柴田】日本でアメリカって言うと現実のアメリカを指すわけですけど、アメリカでアメリカって言うと現実のアメリカ以外のものを指すから、そこが厄介なんですよね。それで今のお話を翻訳ということに引きつけて言うと、小説の翻訳がいいのは、そうやって不可能なことがいっぱいあるんだけど近似値ができて、ある程度の長さをやっていくと近似値がいっぱい合わさって大体落ち着くべきところに落ち着くと思うんです。……。
【高橋】うまくいっている翻訳って、一つの世界ができているんですよね。それはみともとオリジナルの作品にあった世界のコピーというか、それを描写したものなんですけれど、うまくいっているとオリジナルがなくても「あ、こういう世界があるんだ」と思わせることができる。
………
〈第2章 高橋さんが柴田さんに聞いた「小説の訳し方」」より〉

【高橋】……。でも、それは、われわれが生きている、ということの中味だと思うんです。生きているということの実体は繰り返しとステレオタイプと死語で埋まっているということです。それを小説では、人生というものはもっと何かかっこよくて、新しいものに満ち満ちているかのごとく書いてきた。その矛盾に耐え切れなくなったという側面もあるわけですね。……
〈第4章 小説の読み方　日本文学篇　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　より〉


著者紹介
柴田　元幸 
1954年東京都生まれ。翻訳家、東京大学名誉教授。P・オースター、S・ミルハウザーをはじめ現代アメリカ小説の翻訳多数。著書に、『生半（半＝旧字）可な學者』（講談社エッセイ賞）など。

高橋　源一郎 
1951年生まれ。81年、『さようなら、ギャングたち』で群像新人賞長篇小説賞を受賞しデビュー。三島賞、伊藤整文学賞、谷崎潤一郎賞他各賞を受賞。近著に『一億三千万人のための『論語』教室』他多数。


美品　カバー上部に少しヤケあり