マリアテレジアとシェーンブルン宮殿マリアテレジア展で
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本書序文■

ウィーン美術史美術館はシェーンブルン宮殿のご協力を得て、

日本とシンガポールを巡回する本展覧会で、ハプスブルク家の一人の偉大な君主を偲ぶことにいたします。



女帝マリア・テレジア(1717-80)は、没後226年たった今日もなお、オーストリアや

かつてのオーストリア君主国の継承国で、尊敬され高く評価されています。

社会制度や行政上の大改革、近代国家機構の創設、諸州における経済組織の構築、

殖産興業と並んで、マリア・テレジアは民族の多様性のうちに連帯の意識を促進することに成功しました。



みずからも16人の子供たちの母親であったこの君主は、王家の家長、新たに創設された

ハプスブルク・ロートリンゲン家の始祖であっただけでなく、統治者と国民の間の新しい関係を見事につくりあげた、

理想的な国母でもあったのです。



ウィーン美術史美術館の前方、マリア・テレジアの継承者皇帝フランツ・ヨーゼフ1世(1830-1916)が

100年後に建造させた二つの王宮博物館に挟まれた広場に、重鎮の宮廷顧問や軍人たちに囲まれた、

この女帝の秀逸な記念像が立っております。



1741年のプレスブルクの議会の場面、新しい大学建築の引き渡し、

マリア・テレジア勲章の創設や拷問台の廃止といった、

彼女の治世下での意義深い重要な出来事が、記念像の台座レリーフに表されております。



戦闘の場面はまったく見当たりません。

女帝の行った改革の成果が、当然、この記念像の芸術的プログラムの中心に横たわっており、

行政組織や学校制度、教会の分野におけるこれらの雄大な改革によってこそ、

マリア・テレジアの思い出は今日にいたるまで生き続けているのです。



したがって、このハプスブルク家の著名な女帝の生涯とその治世に捧げられた本展覧会に、

日本とシンガポールでできるかぎり多くの皆様がご関心をもってご来場くださることを願っております。