魔女とキリスト教―ヨーロッパ学再考

上山 安敏

講談社学術文庫　2022



魔女とは何か？魔女の淵源は古代地中海世界の太母神信仰に遡る。それは恐怖と共に畏敬にみちた存在であった。時を経て太母神はゲルマンやケルト等の土着の神々と習合し、キリスト教との相克の過程で「魔女」に仕立て上げられていく。そして中世の異端審問、凄惨な魔女狩り…。民族学、神話学、宗教学、精神分析学等々、広範な学問の成果に立脚し、魔女を通じて探った異色のヨーロッパ精神史。



目次

第１篇　キリスト文明と魔女

　ディアナ信仰とキリスト教

　ユダヤ教―一神教と自然宗教の間

　民間伝承としての魔女信仰

第２篇　魔女狩りの構図

　異端審問と教会位階制

　キリスト教エリート文化と民衆文化

　産婆と魔女

　『魔女への鉄鎚』の周辺

　１６、17世紀の魔女裁判

第３篇　ヨーロッパ思想の中の魔女

　ルネサンス魔術と魔女裁判

　魔女狩りとプロテスタンティズム

　魔女狩りの衰退と神学の変容　ほか



この本は、魔女狩りについても、キリスト教についても、書かれていますが、それがテーマではありません。ヨーロッパはキリスト教世界だと思われていますが、決してキリスト教の一枚岩ではありませんでした。キリスト教から見たら敵対する神学体系にある女神、太母信仰が魔女を作り出したのです。

この著書の素晴らしいところは、最後の方に、これも一枚岩だと思われていた「ヘブライの一神教（ユダヤーキリスト教）」が、決してそうではないというところまで掘り下げているところです。ユダヤ教一神教の前、イスラエルの世界は女性神も祭っていた多神教もあり、救済宗教・民族宗教であるユダヤ教（そしてその派生であるキリスト教）は戦闘的にほかのそうした宗教を排除していったのです。

何度読んでも読み足りない、でもこれ以上のヨーロッパ史はほかでは読めないと思いますので、寝不足になること覚悟でお読みください。（レビュー）



#信仰

#神話学

#民俗学

#法制史

#医学史

#精神分析学

#身体

#生殖

#医学

#フェミニズム

#本

#BOOK

#思い出本屋

#思い出本屋西洋文化

#思い出本屋西洋文学

#思い出本屋西洋史

#思い出本屋西洋中世

#思い出本屋ルネサンス

#思い出本屋西洋文化

#思い出本屋ヨーロッパ

#思い出本屋宗教

#思い出本屋魔女

#思い出本屋悪魔

#思い出本屋女性