ローマン・ブラウン・ガラス面取り、細長の双円錐台型ビーズ（側面上下8と孔面2）で、100～300年頃のビーズとされます。側面には、孔に並行し小さな気泡の連続跡が見られ、孔のいくつかではキラキラと光り、わずかですが銀化彩色がみられます（4枚め）。

　4つの側面は、上下の端から中央に向け緩やかに高くなり、縁は角ばった線です。マーバー板の上で引き延ばし、小さな気泡跡の連続する4角柱ができ、面取りして成形します。内部に比較的大きな気泡が見られ、これは融解温度が低い状態でのガラス製造・ビーズ制作を示します。

　 A Bead Timelineでは、正方体の自然石面取りビーズが200年頃に掲載され、他方、ガラス製の面取りビーズは遅れて400年頃となります。本品も遅れた時期に属すると見なせます。

濃いブラウン、また、クリアやセミ・クリアのブラウンなど、琥珀色のガラスは、鉄硫黄（あるいは、鉄と硫黄）を酸素の少ない還元状態で製造されます。これらの要因が表面に粒々や赤い小さな斑点を出現させるようです（6枚め）。一般的に、赤色は還元状態で酸化銅（CuO）により発色しますので、赤い斑点は銅に依るのもしれません。

　前2世紀～後4世紀には、ブラウン色のローマン・ガラスで壷、容器や杯が多数制作され、ビーズも制作されました。しかし、Bead Timeline では、300年頃の掲載は、珍しくないためか、琥珀色の平玉（おはじき風）1つに限られ、不透明な赤茶ビーズが10個ほどの掲載と対照的です。

普及したブラウン・ガラスの主要な地域は、ガラス製作の中心地のレバントやローマ周辺よりも、ローマ帝国東領域のアフガニスタン、パキスタンなどで製作されたと考えられ、実際、今日アフガニスタンや近くのパキスタンからブラウン・ガラス片が多く出土します。

しかし、ブラウン・ガラスの出現はずっと古く、イタリア西北部ですでに前1300-前1200年頃に、この樽型ビーズやアイ・ビーズが制作されたと確認され、前1700-前1150年頃に北西部からアドリア地域のポー平原中央部（ミラノ南東約120㌔）まで広がったとされます。

　面取りブラウン・ガラス・ビーズは、アフガニスタンなどの出土品でもほぼ見ない珍しい形で、ブラウン・ガラスの出自と地域的変遷も興味深く伝えます。

　サイズ　縦約16㍉　幅　約6㍉　孔径　約4㍉