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夢を売る男　

　牛河原の会社丸栄社では数百万円で素人の駄文を出版します。そこにはプロの編集者による指導や校閲、全国書店への販路などの料金が入っているとはいえ、いくらなんでも高すぎます。それを牛河原の舌先三寸で、割高自費出版へと導く例が序盤で掃海されます。半ば詐欺に近い手法で100万円単位の出費をするのは、自分史を残したい高齢者、自分は天才と信じるフリータ-だったり、自分の教育論が正しいと信じ込んでいる主婦。みんな他人が書いた小説（活字）は読まないのに、自分では誰も読まない文章を残したくて仕方ないのです。そして彼らの出版という夢をかなえるために詐欺まがいの自費出版社は大繁盛。

しかしこの手法をまねた後発の狼煙社が大幅なダンピングをして丸栄社を脅かします。経営が危うくなった丸栄社はライバル狼煙社を蹴落とすためにマスコミを利用して…最終的には詐欺のような牛河原は実はいい人で少し泣かしてくれます。



夏の騎士

自分の臆病さに悩みを持つ小学6年生の遠藤宏志は、勇敢な男になるために友人二人とともに騎士団を結成。ところがこの3人組は運動も勉強もできないクラスの落ちこぼれで、クラスメイトからもバカにされています。そんな中、騎士として忠誠を誓ったレディに認められようと苦手だった勉強に奮闘したりしてだんだん成長を見せ、果ては学区内で起きた女子生徒殺人事件を追ったり・・・荒唐無稽な展開ではあるが、昭和末の時代背景がそこはかとなくノスタルジックで最後までサクサク読ませます。少なくとも本家「スタンド・バイ・ミー」よりは面白いと思いました。