ヘミングウェイ・ノート：虚無の超克

加藤 宗幸

九州大学出版会 1987



スピラーが認めているようにヘミングウェイがその作品とその送った生涯において示している強烈な「生きんとする意志」と, 「うち勝とうとする意志」 とを認めることによって, ヘミング ウェイが他の多くの 「失われた世代」の 作家たちとは異なっていることに注目した者は少なかった。ヘミングウェイは、 これらの意志を基盤として独自の芸術の世界を築きあげた。彼は絶望の「黒い文学によりどころを求めて, それを乗り越し,それを支配することができた」のである。この意味において彼は, 「失われた世代」の多くの作家たちとは袂を分かっていた。本書は, ヘミングウェイ 文学 に欠落しているのではと言われてきた思想とその一貫性を,彼の主要長篇および キリマンジャロとマコウマーの珠玉の二短篇によって探り, あわせて彼のとげた 「激烈な死」の意味につい論究する。（裏表紙より）



【目次】

第一章 ヘミングウェイの思想管見

１ ヘミングウェイと形式

２ 虚無の浸透

３ 虚無克服の生存の可能性

第二章 ヘミングウェイと「失われた世代」

１ 「失われた世代」という言葉の意味

２ 批評家たちの「失われた世代」観

３ ヘミングウェイと「失われた世代」

第三章 ヘミングウェイの「喪失」観―否定と肯定と—

１ 客体的生存

２ 主体的生存

３ ヘミングウェイの「喪失」観

第四章 ヘミングウェイの闘牛観

１ 『午後の死』誕生

２ ヘミングウェイの闘牛観

３ 闘牛と実存的人間像

第五章 「闘牛愛好者」としてのヘミングウェイと彼の死と

１ 「闘牛愛好者」の三つの特性

２ 「常識」

３ 「非実際性」

４ 「誇リ」

５ ヘミングウェイの死

第六章 短篇の研究

１ 「キリマンジャロの雪」について—実存主義的考察

２ フランシス・マコウマーの幸福

注

あとがき

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