4-7C頃の制作とされるモザイク線紋のササン・ビーズで、セミ・クリナな黄と白の胎に、赤茶の1線や小片を付し、キリリとまとめた多色の中玉です。

本品は、胎の下に大きく曲がる1本の、ほぼクリアでやや暗い緑黄ガラス、中央で曲がる2本の、セミ・クリアな明るい黄ガラス、胎奥に広がる白ガラスに黄ガラスを被せた、セミ・クリアな黄白のガラスで成形されています。

暗い緑黄や明るい黄などの融解ガラスで、粘りのある飴を捩じって巻いた飴細工のように、数本の曲げられた線（筋）は少し高く盛り上がり、表面には粘り気のため凹凸した制作跡が残ります。

セミ・クリナな明るい黄の下に広がる不透明な白ガラスは、上の穿孔面の端や下の曲線1本では白ガラスそのものが表れます。また、芯軸のなかには、白ガラスとそれに被せた綺麗な黄ガラスが覗き（10，11，13，17枚め）、黄・白モザイク片での成形を示します。

黄と白の胎に、胎中央の細い線にはキリリと赤茶ガラスが用いられ、他に3か所ほどに小さな突起片群や、2つほど細長斑点に付され、黄・白ササン・ビーズに多色の華やかさをかもし出します。

一般的にササン・ビーズは、アイとアイから広がる放射紋、それに多色を特徴とし、イスラム期初期（900年頃）までにこのモチーフが成熟したと言われます。比較的早期には、ローマン・ビーズを継承し、本品のようなモザイク・ビーズが見られます。

モザイク玉の本品の製法は、いくつかの点は推測できそうです。まず、不透明白ガラス片に、クリナで暗緑黄やセミ・クリアな黄ガラスで数本の筋を埋め、筋の上下や胎表面に融解したセミ・クリナな黄ガラスを被せ、飴細工状のモザイク片を作ります。

このモザイク片を芯軸に巻くか、あるいは、モザイク片に芯軸を通し下側に折り曲げ球体に成形し、モザイク片の一部を融着させる必要があります。本品で確認できませんが、下部分赤茶の小片群近くで融着させたのかもしれません。少なくともこの部分で、左右の曲線に連続性が見られません。

最後に、穿孔軸とほぼ直角に鉄棒などを下の穿孔面から押し上げ、上向きの曲線を描きます。本品は、ローマンやイスラム・ビーズと異なる飴色風の多色で、自然光にかざすと緑・黄に輝き赤も加わり、自然の恵みの再現するようなササン・ビーズです。

サイズ　高さ約10㍉　幅約10㍉　孔径大　約5㍉