「夜露がたり」　

砂原浩太朗

定価: ￥１９２５円



武家ものの長編を書いてきた

砂原浩太朗初の市井もの短編集。



島送りから戻って来た女房の元夫の影におびえる錺職人、

両国橋の両側で抗争を続ける二人の少年、

十年前に姿を消した父親が戻って来て、また借金が増える恐怖、

女房の寝言に前の亭主を忘れられないのだと嫉妬に狂う男、

仕官を求める希望と長屋での恋心に葛藤する浪人侍、

貧困長屋時代の幼なじみと再会した男の心の迷い、

死んだ幼なじみに対する罪ほろぼしの気持ちが残された子供に向かう女、

父親の商家に引き取られたが縁談が起こり悩む妾の子、



等々、江戸時代の庶民の生活を活写する８編の短編。

どうしようもない定めから

抜け出せずに苦悶する登場人物の姿が

読者の心に暗く迫る。

藤沢周平を彷彿させる。



カバーをして１度読んだきりで、新品同様です。