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こわれもの

漫画家・陣内は過去に恋人を自殺で亡くし婚約者を交通事故亡くして失意に暮れ、自らのヒット漫画の大人気ヒロインを殺すと言う展開にします。彼の暴挙にヒロインのファンたちは大ブーイング。その一人、狂的なヒロインファンであるフリーター・三橋は怒りのあまり陣内殺害を企てるのでした。この2人の攻防が物語の一つの軸です。一方、死を予知できる神崎は陣内の婚約者の事故死を事前に予知し、警告していたのです。婚約者の死後この事実を知った陣内は、神崎に接触を図ります。そして陣内の目の前で、神崎は第２の、第３の死亡事件を的中させ、ついに陣内自身の死亡が予知されるのでした。

陣内をつけ狙う三橋と神崎の予知という、二つのミステリー、サスペンスが巧みに絡み合って物語を盛り上げます。後半はこれでもかこれでもかというどんでん返しのオンパレードです。



彼女の幸せを祈れない

銀次郎シリーズの第3作目で、またもや銀次郎の活躍を期待するファンです。出だしは同業者のフリーライター・青葉が講演で殺されたことをきっかけに調査を始める銀次郎。どうやら青葉は命が狙われるほどのヤバイネタを追っていたようで、それは大物与党政治家に絡むスキャンダル。その真相の一端を掴んだ途端、今度は銀次郎が刺されて物語から姿を完全に消してしまうのです。

で、後半は主人公が後退してある政治家の隠し子である薫という短大生。あろうことか薫は自分の腹違いの兄（政治家の長男）と交際を始めます。その周辺にもライターからの取材攻撃などがあり、青葉殺人事件との繋がりが見え始めるのです。

銀次郎が刺される時点で犯人がすっかり解っているので推理モノとしての魅力はほとんどありません。ただしこの薫の正体というのが、事件全体を覆うスキャンダルに強くかかわって切るところがミソになっています。そして薫の正体を隠すために浦賀は叙述的なレトリックを使っているのですが、これがお粗末で、すぐにバレバレです。おかげでラストの衝撃は半減。毀誉褒貶のある問題小説です。