帯に「伯父は信長、義兄は秀吉、義父は家康、夫は秀忠、息子は家光、娘は天皇の母」とある。お江は信長の妹である市の産んだ三女で、秀吉の弟に嫁ぎ、その後家康の息子秀忠に嫁いで、家光となる息子を産み、その娘は後水尾天皇の中宮となり、明正天皇となる娘を産んだ。江には５つの名前があったことが知られる。江、江与、小督、達子、徳子。このことから読み方は「ごう」であり、家康の娘にも江がいたため、於江与（おえよ）と呼ばれたらしい。秀忠が太政大臣となり、娘も中宮となったため、◯子という朝廷風で平安以来の伝統的名が付けられたが、こちらの読み方は不明である。女性で名前がわかっているのは将軍の正室や皇后、中宮などが記録に残るが、紫式部や清少納言など、呼び名はどこにも記録として残っていない。また彰子や定子という名前の読み方も不明であり、ドラマではショウシ、テイシ、あきこ、さだこ、などと脚本家の好みで付けられる場合も多い。



お江は元亀４年・天正元年（１５７３年）、浅井長政と正室市の第三女として生まれたが、信長に滅ぼされた長政は自刃。娘の茶々、初、江は市とともに救出された。その後二人の武将に嫁いだあと家康の三男秀忠に嫁ぐ。家康には正室築山殿の子で長男信康がおり、正室は信長の娘。今川氏との繋がりを信長に疑われた家康は築山殿と信康に自害を求めた。家康の次男秀康は秀吉の養子であり常陸の結城家の相続人、後の越前松平家の祖となる。文禄４年（１５９５年）にお江が秀忠に嫁いだときは、秀忠１７歳で主君秀吉のお声掛かりで結婚した格上の妻がお江だった。二人には７人の子が生まれる。徳川１５代将軍のうち、正室が産んだのは家光だけである。



この時代は数多くの大河ドラマに取り上げられてきた。本書著者は各時代の考証に注文をつける。

１．女性が家族や寝物語以外の政策決定の場で意見を述べることなどない。

２．政権を支えたブレインは学識ある僧侶たち。室町時代には臨済宗、家康は僧侶時代の利休、家康には天海、崇伝、道春（林羅山）、西笑承兌がいた。

３．清盛は相国殿、六波羅殿、頼朝なら右大将殿、鎌倉殿、家康なら時代によるが内府殿などで、特に臣下が主君を「清盛様」「信長様」などと名前で呼ぶことはない。

定価: ￥ 770（税込み）



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