ベートーヴェン

①ピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調 作品109

②ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 作品110

③ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 作品111



ルドルフ・ゼルキン (ピアノ)

録音:1987年10月ウィーン（ライヴ）



ルドルフ・ゼルキン(1903-1991）は、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集を完成させませんでしたが、録音したソナタの各曲はどれも名演です。その中でも、最晩年に録音したこの3曲の高雅さ、崇高さ、音色の美しさは言葉に尽くせないほどです。ポリーニ 、バックハウス、グルダ、グールド など名演は多いですが、このゼルキン盤も外せない逸品です。ライヴ録音ですが、録音も最上級です。



評する言葉が空しくなる超絶的名演です。ベートーヴェンの到達点の深さが身に染みて分かります。心の内からの音楽が、輝かしく透明な音で強靭に提示される様には、不覚にも涙してしまいそうです。なんと84歳のゼルキン！誠実で優しい演奏です、ポリーニのような超絶技巧・自己主張・なめらかさはありませんが、このひとの持ち味は違うところにあるような気がします。ポリーニのような演奏も好きですが、この演奏は静かな場所でじっくり聴くと心が洗われる気分になりますし、やはり言葉では言えない魅力があります。目には見えないけれど、じわじわとこちらに伝わってくるような名演です。



このゼルキンの弾くベートーヴェンの音楽、演奏が持つ言葉はけして饒舌ではなく、控え目で、荒削りなものがいくつもあるけれども、ゼルキンの弾くベートーヴェンの32番、単純な主題がいくつもの変奏となってクライマックスを築き、やがて、静かな終わりを迎える第２楽章、ここにはバックハウスの演奏よりもたっぷりとした情感があり、まずそこに魅了されます。真摯で優しく、そして演奏する喜びがある。こういう演奏を何十年という歳月をピアノを弾くことに費やした老人が奏でている。そんなすばらしい音楽を聴くことができるのは幸福なことです。



国内盤【廃盤】帯無し、盤面傷無し　13



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