1999年　163P

ごあいさつ

本阿弥光悦(一五五八二一六三七)と俵屋宗達(生没年不詳)は、日本近世初期を代表する芸術家です。とりわけ光悦の陶芸と書、宗達の絵画は、日本美術の粋と言えましょう。宗達とその一派が金銀泥下絵を描いた崔麗な料紙に、光悦が筆を揮った和歌巻をひもとくと、互いの鋭敏な美意識と闊達な個性が存分に発揮されながら、たぐいまれな調和をみせています。

本年は、サントリー創業一〇〇周年にあたります。この展覧会はこれを記念して開催されるもので、本阿弥光悦の茶碗をはじめ、書、蒔絵など、光悦が生み出した芸術性あふれる作品と、金銀泥下絵にみられるように、共に同時代を生きて豊かな創作活動を行った俵屋宗達とその一派の和歌巻や色紙などを一堂に陳列し、王朝の雅な美意識をふまえながら、桃山時代の闊達な精神によって新たな息が吹き込まれた彼らの芸術に迫ろうとするものです。

この展観が、その後に続く琳派の流れの礎を築いた光悦と宗達の、我が国の美術に占める位置とその意味を、改めて見直す機会となれば幸いです。

一九九九年六月
サントリー美術館
館長 佐治敬三一

表紙小傷。背表紙やや色あせ。ページ小黄ばみもちろん読む分には問題ありません。

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