2003年 140ページ
Seven Master Ceramic Artisans Captivated by Momoyama Pottery

明治時代のやきものの生産地では、文明開化の流れの中で欧米 各地で開催された万国博覧会への出品がさかんにおこなわれ、 多く の名陶工の活躍がありましたが、 個人作家が誕生するにはいまだ充分 な社会状況ではありませんでした。 しかし、大正時代になると次第に制 作者の個性や独創性が重視されるようになり、個人の美意識による創 造が求められるようになります。
そのように登場してきた作家の中には、桃山時代のやきものの魅力 に着目していた作家が少なくありません。 名品や陶片をもとに陶技を学 び、自らの作陶に反映させていったのです。 彼らは昭和に入ってから さかんに古窯跡の発掘を始めました。 荒川豊蔵が美濃の山中におい て筍の絵のある志野陶片を発見し、昭和の大スクープと報道されたの は昭和5年のことでした。
古唐津の再興に情熱を燃やした中里無庵 古備前の作風を自家 薬籠中のものとした金重陶陽、 子どもの頃から陶片拾いに明け暮れた 瀬戸の加藤唐九郎など、 とくに陶片から陶技を学んだ陶芸家は枚挙に いとまがなく、 彼らによって近代陶芸のなかに新しい伝統の息吹が形 成されていったといっても過言ではありません。
本展は、昭和の時代に新しい伝統をつくりあげた陶芸家の中から、 とくに美濃・備前・唐津・瀬戸の陶芸を代表する荒川豊蔵 中里無庵・ 金重陶陽・加藤唐九郎と、 その形成に深く関わった川喜田半泥子・石 黒宗麿 ・ 小山冨士夫の七人の陶芸家の作品、 さらに、 その制作の原 点となった桃山陶の名品や陶片を同時に展示することによって、昭和 を代表する陶芸家らが、 どのようにして名品・陶片から陶技を学んで いったかという、その背景をも紹介しようとするものです。
最後になりましたが、 本展覧会のために貴重な作品を快くご出品下 さいましたご所蔵家の方々、 本展覧会の実現のために惜しみないご協 力を賜りました関係者各位に対し、ここに心からお礼申しあげます。
2003年

表紙小傷、小汚れ。もちろん読む分には問題ありません。

なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。ご理解の上、ご購入下さい。