はじめに
『日本の名字・家紋 大事典」 別巻 「ビジュアル解説 名字と家紋」は、実際の名字や家紋につ いて調べるところからもう一歩踏み込み、名字や家紋の知りたい・見たいテーマを様々な角度 から取り上げ、写真やイラスト、再現地図などを駆使してまとめ上げた「日本の名字・家紋大 事典』オリジナルのぜいたくな大判図録です。
「名字大事典」や「家紋大事典」では触れることができなかったそれぞれの成り立ち。関ヶ 原合戦図屏風などで旗印に描かれていた家紋が、武具だけでなく、調度品や建築物にあしらわ れるようになるさま。全国と都道府県、両方の名字ランキングを掲載することで見えてくる地 域ごとの名字の特色。さらには、家紋の元になった植物や道具などの素材図鑑――。 「読む」 ことではなく「見る」ことによる発見や楽しさが詰まっています。
本冊にあたる「名字大事典」、「家紋大事典」と合わせてご覧いただくことで、ご自身のルー ツを探す旅の道しるべとなり、ご自身の祖先や身近な方への知識がより深まれば、これに勝る 喜びはありません。
ユーキャン

世界には多くの紋章が存在しているが、 千年の歴史を持つ日本の家紋は王 侯貴族から武士、 庶民に至るまで、等しく用いられる紋章文化として極めて まれな存在である。 11世紀に貴族から始まった家紋は、やがて武士に用いら れて日本全国に広がり、 15世紀には一部の庶民も使うようになった。 家紋は 名字と並び、家々の家格と由緒を主張し、 一族の喜びと悲しみを見守りなが ら現代へと伝えられてきたのである。いわば家紋とは過去と未来を繋ぐ大切 なバトンなのである。
日本という起伏のある風土の中で生まれた家紋は、四季に移ろう自然観、 自然観から発生した宗教観や価値観が込められている。 近年はそうした日本 人が知らずに身に纏う有形無形の美意識に、 海外からも熱い羨望の視線を集
めている。
しかし日本の家紋のモチーフは、海外の紋章と違い決して優れた題材ばか りを扱っているわけではない。 路傍で踏みにじられるような目立たぬ雑草を、 階級制度の頂点に立つ貴族が家紋としている例もある。 家紋は日本独特の侘 び寂びの情緒とともに物事の本質を間接的な表現で静に主張しているのであ る。 家紋はすばらしいデザイン性を持っているが、 その本当の価値は家紋に 込められている 「意味」にある。 それは日本人が愛し、 畏れ敬い続けた森羅万 象を根底に形作られた日本的エッセンスを凝集した文化であるということだ。 そうした家紋文化の素晴らしさを、本書を通じて読者の皆様にお伝えでき れば望外の幸せと思う次第である。
高澤等

外箱小傷程度で特に目立った傷や汚れはありません。