1994年　253P

30年の木簡研究史をふまえ代表的な古代木簡500点余を全国から精選，そのほとんどを実物大で収録，雄渾あるいは繊細な墨跡を明示する．木簡学会が10周年記念事業の一環として総力をあげて企画・編集した木簡図録の決定版である．

■編集部からのメッセージ

木簡が初めて発見されたのは、1961年、奈良平城宮あとの土中からでした。後代の写本に基く文字史料か、考古学的な遺構遺物しか史料のなかった古代史研究に、まったく新しい史料が出現した瞬間でした。それから40年がたち、出土した木簡の数はいまや20万点を超えるようになりました。史料の少ない古代史研究にとって、古代の人々の生活を具体的に知りうる貴重な第一次の情報源として、木簡の重要性はいよいよ高まっています。

　と同時に、墨跡も鮮やかな木簡に一度でも接したことのある人なら、そのときの「感動」を忘れることができないのではないでしょうか。目の前のこの文字を、千年以上前の人が書いたのだ、と想像することは、わたしたちを遠い古代の世界に一挙に運んで行ってくれます。多様な筆跡は、書いた人の面影さえ伝えてくれるようです。時に雄渾に、時に繊細に躍る文字の連なりは、巧まずしてみごとな芸術、生きた書道の手本となっているようでもあります。木簡の世界は、まことに広く深いものです。

■編集部からのメッセージ

木簡学会が発足したのは、1979年でした。木簡に関する情報の蒐集と整理、研究と保存を全国的に推進することを目的に、学会は設立されました。日本古代史研究者を主体としたこの学会の名称に、しかし「日本」という国名は含まれていません。それは、木簡は日本に限って存在しているわけではないという事実をあらわすと同時に、いかなる国の研究者にも門戸を開いていようとする、この学会の国際性をあらわすものでもあります。
　1989年に創立10周年を迎えた木簡学会が、その記念として刊行したのがこの『日本古代木簡選』です。全国各地の遺跡から出土した木簡のうち、史料として重要なもの、類例の多いもの、墨蹟の鮮やかなものなどを選び、それらを原寸写真で紹介したものです。各木簡には釈文と解説を付し、出土した遺跡の性格や出土の状況などもあわせて記載しています。歴史史料集として利用できるだけでなく、文字資料集としても、また書跡の資料としても活用できるように工夫してあります。

　本書は1990年に刊行されるや、高い評価を受けて短時日のうちに品切れになったものです。その後も一度復刊しましたが、このときもすぐに品切れになりました。今回は、木簡学会の20周年（1999年）を記念して新たに編集された『日本古代木簡集成』が東京大学出版会から刊行されるのにあわせて、復刊するものです。（この『日本古代木簡集成』は、長屋王木簡などこの十余年間に発見された木簡を中心に集成したものです。税込定価21000円）

外箱傷、小汚れ、小破れ。もちろん読む分には問題ありません。

なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。ご理解の上、ご購入下さい。