昭和60年　261P

茶に関する歴史は相当に古く、聖武天皇の神亀五年一二月には「造茶使」の制があったといわれる。また天 平元年四月八日には奈良の内裏で行茶の儀が行なわれ、弘仁六年ごろには天皇に献茶し奉ったということが みえ、当時茶園を作られたこともあったらしい。
平安時代の「凌雲集」や「文華秀麗集」には、池亭に茶宴を催されたことを伝えており、また藤原周光の詩 中には、当時茶を薬用として用いていたこともわかる。中国では殷の時代に茶毒の文字がみえ、上元元年ご ろには陸羽によって茶経が著わされたと伝えている。しかし、その当時の点茶に関する形式は全く不明で、 茶をどのようにして喫茶していたかは明らかでない。
鎌倉時代になって僧栄西によって抹茶の製法が伝えられ、道元禅師は「永平清規」を著わして茶禅一味の極 致を示しなどしたが、武家の間には闘茶の風習が流行した。
しかし、茶がいわゆる茶の湯として器物と作法、建築がそれぞれ一体となって茶事を行なうようになったの は足利義政が応仁の乱を機として文明五年政治を義尚に譲り、東山殿の経営に着手してからである。 能阿 弥、芸阿弥、相阿弥などの同朋たちの間に、村田珠光があらわれて茶式に工夫を加え、真の四畳半を設けて 書院台子の式事が創始された。
ついで珠光の門から宗珠、古市播磨守、松本宗陳、同宗悟、牡丹花松柏などが出て京都の各所に庵を結び、 また、武野紹鷗が堺から京都に出て珠光真の四畳半のところどころを改めていわゆる紹鷗行の四畳半をつく った。すなわち「武野大黒庵紹鷗老人自筆の写」には『此図は此四畳半の座敷也。 如此囲炉裏のなき間台子 又は一枚板などの向張付より台子の間四寸余を見る作に可置』などとあって、このころには四畳半に台子を 飾り、風炉の形式であった。

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