「マーチン・ヒューイットの事件簿」
　訳者: 井上 一夫

　《シャーロック・ホームズのライヴァルたち》
は陸続として登場し、後を経たない♪

　ライヘンバッハの滝壺に姿を消したホームズに代わって〈ストランド・マガジン〉に登場したのが、探偵マーチン・ヒューイットである。　
　その作品にはジャーナリスト作家の眼がとらえたヴィクトリア朝のロンドンが生き生きと描かれている。
　ホームズ型の超人探偵が各々のエキセントリックな性格を競い合う中で、「普通の人」の視線を保持したヒューイットは一頭抽んでた存在であった。

・探偵マーチン・ヒューイット
・サミー・クロケットの失踪
・フォガット氏の事件
・ディクソン魚雷事件
・クレイトン宝石事件
・スタンウェイ・カメオの謎
・亀の事件
・アイヴィ・コテージの謎
・〈ニコウバー〉号の金塊事件
・ホールファド遺言状事件
・レイカー失踪事件

　巻末　解説 戸川 安宣氏
「〈中略〉マーチン・ヒューイットはシャーロック・ホームズほど華やかでも全能でもなく、ごく平凡な人物である。〈中略〉洞察力や驚くべき天賦の才においては後塵に　を拝しても、はるかに現実的な存在であった。〈中略〉著者は、推理小説を現実にも充分あり得る話にしようと努め、鏤骨の、学問的でさえある文体で、根っからの作り物であるエンターテイメントの類などたいていは一顧だにしないという読者層に訴えようとしたのだ」
　この文はかのS・S・ヴァン・ダインの“評価”とのこと♪

　殺人事件だけではなく、あらゆる犯罪を“俎上”に乗せて謎解きを・・その姿勢は拍手ではないかと♪
　
　経年劣化に伴う周辺部の軽度の焼け、カバーに若干のヨレが発生していますが、古書レベルとしての本の状態は概ね良好かと♪