榎本武揚は江戸末期には幕府の軍人で長崎の操船学校で教育を受ける。幕府がオランダに発注した軍艦 開陽丸を引取りにオランダ留学の経験もある。戊辰戦争では西郷隆盛率いる薩長連合の横暴さに抵抗し、京都、東京、最後は函館まで追いやられた。
北海道に新しく蝦夷共和国を設立し初代共和国総統になった。失業した幕臣の武士とその家族を救済するため農業を生業とした新天地を夢見た。
函館の五稜郭に幕府の雇った軍事顧問のフランス人や新選組の土方歳三等の幕府側の逃げ延びた陣容で立て籠ったが最後の箱館戦争に敗れた榎本武揚を描いた作品。
維新後は西郷隆盛など新政府側にもその統率力と人望を買われ新政府の要職にも付いて外交官として樺太等の領土交渉ではロシアとの交渉等に活躍した。晩年には東京農大の前身の初代学長になった。その人物を描いた長編歴史小説。

戊辰戦争(明治維新への転機の内戦)に敗れたが幕府側にも立派な大義名分があったのがよく分かる。勝った薩摩長州中心の新政府側の立場と合わせてこの本を読むと日本の歴史をより公平に深く理解できると思う。