バッハ

平均律クラヴィーア曲集(全巻)

第1巻+第2巻=4CD



スヴァトスラフ・リヒテル (ピアノ)

録音:1970年、1973年



音楽評論家:吉田秀和氏（音楽評論の第一人者）

「一生持っていて、繰り返しきくに耐える演奏」



2017年の名曲名盤500では、グールド盤に次いで第2位に選定されています。グールドとリヒテルはともにピアノでの演奏ですが、これほど対照的な演奏もないでしょう。どちらも聴いていただきたいです。リヒテルの演奏はとてもロマンティックで、バッハの枠を越えるギリギリ寸前で、バッハの音楽に内包されている叙情性を豊かに表現しています。



非常にロマンティックなバッハです。強い打鍵によって生み出されるピアノの音は響きが豊かで、まるで教会か大聖堂で聴いているような錯覚を覚えます。残響が美しく響くのは、ザルツブルクのクレスハイム宮殿での録音だから。リヒテルのピアニズムは陰翳の濃い、透明感にあふれたもので、ヒューマンな温もりに包まれています。とにかく集中力が凄い。自己の内面に沈潜し、神と対話しているかのようなタッチでバッハの音楽の核心に迫っていきます。一曲ごとの色彩感も鮮やかで変化に富み、この曲の構造をくっきりと浮かび上がらせます。



リヒテルはその神々しさと宇宙的な大きさを感じさせてくれます。第1巻の第1番ハ長調BWV846の艶々しい開始にまず心を奪われ、第8番変ホ短調BWV853は深遠で神秘的。その純粋な音が高貴で深い瞑想と思索を紡ぎ出します。第22番変ロ短調BWV867の深い宗教感情が心に沁みます。第2巻の第14番嬰へ短調BWV883で、息の長い美しい旋律が続いていくプレリュードからフーガに引き継がれていくときの素晴らしさをどういえばいいのか。また第9番ホ長調BWV878の純粋で澄み切った美しさは絶品。この演奏にはほんとうに心が慰められます。いつ聴いても邪魔にならず、癒しとなるような音楽。バッハの音楽が持つロマン性と神秘的な宗教感情をこれほど鮮やかに感じさせてくれる演奏は他にはありません。



輸入盤、プラケース少しすれあり

盤面disc4に微すれありますが再生問題無し



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