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　和風の女が描かれたブックカヴァーと「月は怒らない」という哲学的な題名からてっきり武芸者の時代ものかと思い込んでしまったのですが、内容が現代の、しかも一風変わった4つまた恋愛に関する顛末です。かなり特殊な背景設定ですのではじめはリズムが掴みにくいのですが、読み進むにつれて男たちを虜にするミステリアスな女のことを読者自身も好きになってきます。

その女三谷恭子は化粧もしない。服も地味。美人でもない戸籍係の地味な女。しかし彼女に一目会ったとたん魅かれていく4人の男。暴力を生業とする限りなくグレーな男、交番の警官、チャラついた大学生、病を抱える晴れた日曜の二時に亀に餌付けする初老。年齢も環境も違う彼らは響子に惹かれるわけは？男たちの視点と行動を通して、響子の正体が徐々に焙り出されます。垣根らしく恐ろしく曲がる変化球のような恋愛小説。ミステリアスの女性にはそそられますよね。