河瀬虎三郎がひとり密かに、自身の庵で茶を点てる際に使っていた茶碗と聞いております。茶会では使われることがなかったので、世には知られていないものです。

京都に在住の折、奈良の骨董商で、ご子息である河瀬洋三氏より直接譲り受けたものです。
この碗をただ只自身の為だけに使っていた意味が、深淵なる見込みを覗き込むとわかるような気がします。てのひらに包んだときの充実感は格別で、なにか若草のようなやわらかさと、淵を覗き込んだときのうす暗がり、それらを綯交ぜにしてこちらに語りかけてくれます。

割れ高台に、渦巻きの線刻、この茶気に溢れた表情、世にある名椀と対比すればいくつかの瑕瑾があるように観えますが、暫く黙って観ていると、ざんぐりと荒んだ存在感が、一度きり掌に包んだ大井戸茶碗のそれとよく似た童心に溢れ、それらの瑕瑾を不完全の美そのものが埋めってしまっています。この小宇宙を覗き込んでいた虎三郎の俤こそ、この椀の風韻となっています。大茶人が懇ろに使い込んだ味わいが感じられる一碗です。

終わりに、河瀬洋三氏が自費出版された
無窮亭数寄書留『竹柏のしづく』
を紹介致します。この本も河瀬洋三氏より
譲り受けたものです。無窮亭は河瀬虎三郎の別号です。

口径約14.5 センチ 高さ約 6.5センチ

おわかりの方宜しくお願い致します。

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2日前
種類...茶道具

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