バッハ

インヴェンションとシンフォニア BWV.772-801



ヘルムート・ヴァルヒャ（アンマー・チェンバロ）

録音：1961年（ステレオ）　ヴァルハ



この愛らしいとても分かりやすい曲想の小品群が、あの偉大なバッハの作品であることも、至上の喜びにつながる曲集である。ピアノ教習の初心者であれば、必ずと言っていいほど通る楽譜でもあるが、実は非常に高度な音楽性に支えられていることも、いつ何時いつまでも弾き飽きられることのない普遍性に彩られていることも確かなのである。



ピアノによる演奏では、グールドとシフのものなどが有名ですが、チェンバロ演奏ではヴァルヒャ盤、レオンハルト盤、コープマン盤など多数あります。バッハと対峙して聴くのはレオンハルト盤やコープマン盤、もう少しゆったりとノスタルジックな気分も味わいたい場合はヴァルヒャ盤でしょうか。チェンバロが苦手なら、ヴァルヒャ盤がオススメ。大人しめの演奏と言えるかもしれないが、よくよく聴くと、ヴァルヒャの演奏は、単に大人しい訳ではないのは勿論である。抑制のある必要最小限のメリハリが、絶妙なのです。



ヴァルヒャは、周知の通り、盲目の演奏家である。だからという要素は、少なからずあると思うし、だからこその要素もまた大きいと思う。音と音場に対しての鋭敏さ、思い入れは、普通一般の奏者とは明らかに異なる世界観の中から表出する音楽であり、それがまた非常に興味深くもある。ヴァルヒャの人間性からくる誠実さ、敬虔さ、折り目正しさが、全編にわたって一貫していることに驚かされる。奇を衒うとか、名誉を求めるとか、そういった気質は微塵も感じられない。ただひたすらに、バッハの音楽に身を捧げて居る風情が、音楽空間に満ちている。仕事で疲れた時、なにか嫌なことがあった時、サラッと掛けることで、とても落ち着いた気分になれるのも、ヴァルヒャの演奏の特質である。少し距離を置いた感覚で、音量を調整して聴きたい。録音は1961年ステレオ、不満をもつ音質では無論ありません。



国内盤、帯無し、盤面傷無し

解説文は最初から無し



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