「司馬遼太郎が考えたこと」6冊

40年以上の創作活動の傍ら書き残したエッセイを年代を追い収録



〈10〉

1980年代を迎え日本は「成熟社会」入り。自動車摩擦で政府が対米輸出自主規制に踏み切る一方、国内では「新宿バス放火事件」「金属バット殺人事件」等陰惨な事件多発。司馬は『胡蝶の夢』『項羽と劉邦』刊行、『ひとびとの跫音』連載開始。多彩な文学・美術論や「天山の麓の緑のなかで」等のシルクロード紀行等55篇収録



〈11〉

1982年2月、ホテル=ニュージャパン火災、日航機羽田沖墜落。同年9月に三越事件で岡田社長が退陣、企業モラルを問う事件相次ぐ。司馬は『菜の花の沖』刊行、『箱根の坂』連載開始。武士生活についての「男子の作法」「六三郎の婚礼」、上方論、作家論など55篇収録



〈12〉

1983年10月、ロッキード裁判で田中角栄元首相に懲役4年、追徴金5億円の実刑判決。1984年3月に「グリコ事件」発生、「劇場型犯罪」が世間を騒がせる。このころ司馬は『箱根の坂』刊行、『韃靼疾風録』連載開始。「捨てられかけた日本語」「文章における耳と目」等の日本語論、環境問題を論じた「訴えるべき相手がないまま」等63篇収録



〈13〉

1985年9月、プラザ合意成立。急速な円高が進行、日本はバブル景気に沸き返った。一方、豊田商事会長刺殺など経済事件も多発。このころ司馬は『アメリカ素描』を連載、『この国のかたち』執筆開始。1987年『ロシアについて―北方の原形』で読売文学賞受賞。「義経と静御前」「時代を超えた竜馬の魅力」「私の古代像」や近藤紘一への弔辞等54篇



〈14〉

1989年1月、昭和天皇崩御。元号は平成に。1990年1月、株式大暴落。「バブル崩壊」で日本経済は低迷の時代を迎える。このころ司馬は『韃靼疾風録』を刊行、『街道をゆく』の取材でイギリス、オランダ等を旅行。昭和天皇への思いを綴った「空に徹しぬいた偉大さ」、小学校国語教科書のために執筆した「二十一世紀に生きる君たちへ」等70篇収録



〈15〉

1995年1月、阪神・淡路大震災、3月に地下鉄サリン事件と大惨事が続く。司馬は『街道をゆく』『この国のかたち』『風塵抄』の連載半ばに急逝。被災者を励ます「世界にただ一つの神戸」、小説家になった動機を明かす「なぜ小説を書くか」「二十二歳の自分への手紙」等絶筆迄のエッセイ95篇収録