染と織を訪ねる　美術館へ行こう
長崎 巌
新潮社
定価: ￥ 1800+税

こう見れば、もっと楽しい！美術館で出会うさまざまな名品を第一線の専門家がわかりやすく解説。古代からの長い歴史をもつ日本の染と織。さまざまな服飾と裂地を集め、それらを作り上げた人々の優れた技術と色彩感覚、そして身にまとった人々のお洒落心に触れる。

目次
作品目録
美術館の染織作品
染織はこうして始まった
日本の染織
美術館ガイド

「染織」は、その文字が示すように一般に「染物」や「織物」が中心となりますが、厳密にいえば、様々な素材から繊維を取り出し糸を作ること、また、糸で裂(きれ)を編んだり織ったりすること、あるいは、糸や裂を染めること、さらには裂を切ったり縫ったりすること、そしてこれらの行為によってできた製品を含めて、すべてを指します。編物・刺繍・パッチワークといったものまで広く「染織」と呼ばれるのも、こうした定義に則っているためです。

体や衣服に色を付けることは、呪術的効果や種族・所属の表示、さらには権威や身分・部族内での役割の表明などを目的としていたと考えられますが、その過程で、色を付けるだけでなく形を表すことが行われるようになり、「模様」が出現しました。そして、さらに染織や服飾に対する美意識が芽生え、模様に美的装飾効果が求められるようになってくると、模様をより効果的に表し、またこれを恒久的に定着させるために様々な「染織」の技法が考案されました。
〈染織はこうして始まった　より〉


室町時代の後半に起こった応仁の乱は様々な産業に壊滅的な打撃を及ぼしましたが、染織においてはこれが結果として中世からの脱皮を触発する引金となって、近世への道が開かれました。とりわけ注目しなければならないのは、この時代に、現在の「着物」のプロトタイプともいうべきものである「小袖」が、社会階層の上下を通じて衣生活の中心的存在となったことです。そしてこの小袖服飾の成立によって、日本の染織は次第に織物中心から染物中心へと変化していきました。
〈日本の染織　より〉

➤能装束は桃山時代の華
　紫地色紙葡萄模様摺箔
➤武家が生んだ豪華な能装束
　紅白段草花短冊八橋模様縫箔
➤能装束で特に好まれた秋草意匠
　紅白段秋野虫籠模様唐織
➤軽妙洒脱な狂言衣裳
　紺麻地梅御簾色紙短冊波丸模様素袍
　他図版多数


美品