毒薬の手帖

澁澤龍彦

河出文庫 1984



殺人というタブーにふれる行為において、殺人者を最も魅了し興奮させた手段は毒を用いること……毒薬には妖しい魅力が満ちている。それは殺す者と殺される者の間に、劇的シチュエーションをもたらす。数ある殺人のなかでも、「毒殺」こそが犯罪の芸術なのだ！ 毒薬と毒殺事件をめぐる異色のエッセイ集。



目次

古代人は知っていた

血みどろのロオマ宮廷

マンドラゴラの幻想

ボルジア家の天才

聖バルテルミイの夜

ふしぎな解毒剤

ブランヴィリエ侯爵夫人

黒ミサと毒薬

毒草園から近代科学へ

砒素に関する学者の論争

さまざまな毒殺事件

巧妙な医者の犯罪

集団殺戮の時代

文庫版あとがき



「エピソードを中心とした毒の文化史のごときもの」と著者のあとがきにある。古代からフォローしているが、何と言っても中世から近代にかけてのエピソードが豊富で著者の博覧強記ぶりに感心。本書でもカーの名作ミステリ「火刑法廷」が紹介されているが、特に本格ミステリによく登場する毒薬が出て来るので、私のようにミステリファンならなおさら興味深い。

著者らしい平明な文章で、結構陰惨なエピソードを読んでも平気だった。名文家澁澤さんに感謝。



史実やフィクションに現れた、毒薬や毒殺の文化史を綴った異色エッセイ集。ギリシャやシェイクスピアの悲劇における、影の主役ともいえる毒薬。「文化の洗練と殺人の洗練とは、おそらく、いつに時代にも並行して達成されるのであろう」（P.84）。医学や文明の進歩と共に、毒薬が庶民にも手に届くようになり、シャーロック・ホームズのようなミステリにも登場するようになった。「科学の進歩と毒殺術の進歩とは、並行しているとしか考えられないのである」。（レビューより）



全体に経年のヤケ、カバーにスレが見られますが中はきれいです。



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