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維新新国家のグランドデザインを描く壮大な物語。1-10全巻をまとめて提供します。

　維新後薩長土肥のメンバーからなる太政官政権を敷いていた明治政府ですが、参議最長老であり、維新の立役者であった西郷隆盛の征韓論を巡ってまず問題が噴出します。征韓論は国内にくすぶる旧武士階級のうっ憤を海外に向け、さらにロシアの南下政策を迎え撃つ一石二鳥の妙手でしたが、結局ギリギリのところで勅許が得らず西郷は薩間へ下野。もともとは竹馬の友であった西郷と大久保利通も、これをきっかけに袂を分かつこととなります。

　さて薩摩の中で圧倒的人気と指導力を持っていた西郷が下野し、呼応して板垣退助、木戸孝允が去った後は大久保一人が先制政権同様の体をなし強い指導力を発揮するものの、全国の不平をかこつ旧士族たちは、憤懣を募らせ反乱の不穏が広がります。それまでその中心が薩摩出身者であった陸軍（近衛兵）の半数も下野、警察は大打撃を受け、近代国家への改革と藩閥政治に不満持つ士族・人民も全国に満ち溢れて国内の治安は悪化します。佐賀の乱によって江藤新八をも失った脆弱な太政官新政権は台湾出兵の失敗で更に混迷の度合いを深めます。

一方内政的には維新後大久保太政官政権による大改革により職も、禄も、刀も取り上げられた旧武士階級のうっ憤が全国に広がり、神風連の乱、秋月の乱、萩の乱といった元士族による反乱がおきます。政府はこれらを鎮圧するとともに、治安の名のもとに政府の警察・公安権力を増強し専制化してていくのでした。

　そして強大な武力を持つ薩摩を警戒して警察組織のトップ川路、そして大久保自身も西郷に刺客を差し向けます。これに過敏に反応した薩摩は若者たちの怒りを抑えることができず、ついに近代日本で最悪の肉弾戦となる西南戦争の火蓋が切り落とされます。後半は苛烈な戦場の描写とその背景が描かれますが、その実情は太政官新政府の薩摩と旧態島津薩摩の内紛です。



　現代につながる維新政治の黎明期の混乱の10年を膨大な資料分析でくっきりと見せてくれます。