1999年　205ｐ

あいさつ
1999(平成11)年は児島虎次郎の没後70年にあたります。 これを記念い たしまして、「没後70年 児島虎次郎」展を開催することとなりました。 1881 (明治14) 年に岡山県の西北、現在の成羽町に生まれた児島虎次 郎は、画家を志して東京美術学校に入学した年、 1902(明治35)年に、倉敷 の大原家の奨学生となり、大原孫三郎と終生親交を結びます。やがてヨーロ ッパへ留学。 ベルギーで独自の印象主義を学びました。 1919(大正8)年、再 び渡欧する際、ヨーロッパの美術に接する機会に恵まれなかった当時の日本 で西洋美術を学び、愛する人々のために、ヨーロッパの優れた美術品の収集 を決意。 大原孫三郎の経済的援助の下、二度にわたる渡欧で、100点以上 の美術作品を収集し、それが後の大原美術館の基礎となりました。
収集家として名高い児島は、一方では日本における印象派の画家の代 表者としても記憶されています。 今回の展覧会では、この画家としての児島 の仕事を、印象派という定評にこだわることなく、より広い視点でとらえ直して みたいと思います。
フランスで発生した印象派は、その画期的な新しい方法ゆえに、周辺諸国 へ広がるにつれて、さまざまな美術の傾向と融合していきます。 日本人・児島 にとって、20世紀初頭に印象派であることは、そのまま、美術の多様な新しい 流れと直面することでもありました。 児島の一生は、新たなものへの挑戦の連 続だといえます。児島の作品一点一点を完結したものとしてのみ見ず、たえ まない挑戦の一過程としてとらえなおしてみると、彼の成したことと成そうとし たことはより大きな広がりを持って見えてくるのではないでしょうか。
大原家の援助のもとで制作し続けた児島は、作品が一般の目に触れる機 会が少なく、その実力に比して知名度は必ずしも高いとはいえません。 今回 の展覧会では、児島の画家としての生涯を通じての代表的な油絵、デッサン のみならず、屏風絵の力作をはじめとする日本画や陶器なども含めて紹介し、 この逸材の知られざる芸業の全体像に迫ります。
最後に、本展覧会開催にあたりひと方ならぬご尽力を賜りました児島塊太 郎氏、児島草次郎氏、高階秀爾氏をはじめとする関係者各位、ならびに作品 を貸与して下さいました内外所蔵者各位に心からの感謝の意を表します。
1999年10月
主催者

表紙小傷、小汚れ。ページ小黄ばみ。もちろん読む分には問題ありません。

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